和泉の聖母子像(和服姿)-聖マリア修道女会-
この聖母子像は、聖マリア修道女会の本部修道院(杉並区和泉)にあります。本会は、1607年にフランスのボルドーに創立され、英語名(Order of the Company of Mary Our Lady)が示す通り、昔から<ノートルダム(聖母)の会>と呼ばれていました。会の聖母子像は、聖母が御子イエスをいだく像で、各修道院は、固有の聖母子像を創る伝統がありました。
日本でも、創立25周年を記念して、1984年、聖母子像を創ることにしました。出来上がったのが、今回教皇様に祝福していただいた聖母子像です。
「聖母子像の制作」の希望を前に、多くの方からアドバイスをいただきました。彫刻家から「イエス像、マリア像の彫像は生涯の夢です。是非やらせてください」と言われましたが、キリスト教のことをご存じない方との話し合いは難しく、最終的には、マリア論の専門家であったエヴァンヘリスタ神父様(イエズス会士、お姉さまが本会の会員)から、「日本で一番美しいマリア像は、上智大学の神学部聖堂にある舟越保武氏の大理石の聖像です。舟越先生にお願いしたらどうですか?」と勧められ、舟越先生にお願いしました。しかし、先生は、「私は一つのテーマを一作しか作りません。マリア像は、もう作ってしまいました。どうしてもと望まれるならば、ブロンズ像にしてあげます」との回答をいただきました。その後、イエズス会と上智大学神学部のご許可をいただいて、舟越先生に今のブロンズの聖母子像を作っていただきました。
今回の教皇様の来日にあたり、「それぞれの国の特徴を表しているマリア像を」(髪の毛を後ろで束ね、着物を着たマリア様、腕に抱かれたイエス様も着物姿です)と望まれ、お貸しするお話が急きょまとまりました。どのようにして探されたのかは今もってはっきりしていませんが・・・若者がネットで探した?・・・二度三度と係の神父様と関係者がいらっしゃり、本当に丁寧に梱包され、運ばれました。その準備の間に、マリア像の大きさのこと、向きのこと、台座が必要かなど、とても細かいことまで配慮され、心を配ってくださる舞台裏も見せていただきました。たった三日間、マリア像のない私たちの聖堂でしたが、大きな空間ができ、普段は気付かない、そこにマリア像がある安心感と、幼いイエス様を抱く優しいマリア様のまなざしが、この聖堂で祈る私たちの心を癒し、落ち着かせ、見守っていてくださっているという存在を改めて痛感する機会をいただきました。
修道院の隣に「レストナック幼稚園」があるのですが、「(東京)ドームにあったマリア像は、皆が祈りに行くお御堂のご像ですよ」と、子どもたちや教会関係の方々に伝わり、在園児が祈りに行くだけでなく、今では卒園生の家族が「今、学校で友達関係で悩んでいるから祈らせて」「巡礼の心でお訪ねしたい」など、神様の良い知らせが口から口に輪のように広がって、「マリア様の近くに座るだけで心が落ち着きました」「問題を解決するというよりも、心が軽くなった、ありがとう」と喜んで帰って行かれる姿があります。まさに、「良い便り」が広がっていくとはこのことでしょうか。
教皇様の来日に配られた「あなたに話がある」と手を差し出されたポスターに向かって、「この人誰だろう?」「お祈りする人かな?」「神様かな?」と、階段の踊り場で立ち止まって手を合わせていた子どもたちの心にも、教皇様が日本に来てくださり、すぐ隣の私たちの近くに祝福していただいた聖母子像がいつでも私たちを待っていてくださっています。いつでも行ってお祈りできるのだということが、広く伝わっていきますように。
教皇様が伝えてくださった「いのちの尊さや、お互いを大切にすることができますように」というメッセージが、聖母子像を通してもっと多くの人々の心に響いていきますよう願って止みません。この機会をいただいたことに感謝!